神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
「ねえ、桔梗さん。私も一緒に取り込んでくれない‥‥?」
泣きながら必死にお願いする。
なぜか黒い気体は私を取り込まない。
私が欲しいって言ってたじゃ無い。
(ならあげる‥‥私をあげる‥)
「だから奏を返して‥‥」
「月夜様‥」
黒い気体は、気付けば桔梗に変幻していた。
相変わらず綺麗な女性だけど、こんな人が家族も奏も取り込んだなんて思えない。
桔梗は私の頭に手をかざした。
攻撃というより温かく包み込むような。
攻撃性は感じられなかった。
「私でも制御をかけられないのです。この地に縛られている以上、本堂家を食す事はやめられないのです」
「私のご先祖様が、酷い事してごめんね」
「いえ、ただ私は最期に右京様にお会いしたかっただけですから。
大した理由でも無いのに本堂家の皆様には申し訳ない事をしてしまいました。
謝るのは、私の方にございます。
今からお見せする夢は奏様が消した月夜様の記憶でございます。
取り込んだ時に見せるようにと遣わされました」
(奏が‥‥?)
急に眠気が襲い私は暗い闇へと引きずり込まれるように夢の中へと落ちていった。