神恋〜恋に落ちた神と巫女〜



『奏、忘れるって何?』

『月夜、お前は忘れる必要がある』

『奏の事も?』


悲しそうな苦しそうな顔で目をそらす。
幼い頃の私は忘れるなんて事、よく分からなかった。


大好きだから、大好きな奏の言う事ばかり聞いて来たから。


いい子いい子って頭撫でられたかったから。



『忘れられるか?』

『忘れたら偉い?』



頷く奏がなんで泣くのかよく分からなかった。

忘れたら偉いんでしょ?頭撫でてくれるんでしょ?


偉いのに、良いことしてるはずなのに、何で奏は泣いてるの?



『一つだけ、約束を交わそう』

『うん!』

『月夜が歳を満たした時、夫婦になると』



優しい笑顔で、あの温かい手のひらで私の頭を撫でた奏の顔が記憶を無くす最後の瞬間だった。


口元に手を当て、嗚咽を必死に我慢する。


(結局、叶わなかったけど嬉しい約束だった)


ずっと私だけを想ってくれていたんだね。


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