神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
奏が亡くなったと言うのに、本殿に付く灯りは眩しいくらいに明るい。
奏の死を一緒に悲しんでくれているのか、そうでないのかは分からない。
ただ、嫌なくらい眩しい灯りが逆に心強かったりもする。
「桔梗さん成仏したよ。奏の言う通り私はちゃんと生きてるよ」
泣いちゃダメだ。似合わないって言われたんだから。
全部、全部思い出したんだよ。
奏との約束も思い出したんだよ。
「私は、ずっとずっと水無月神社の巫女だからね」
そっと手を握る。
血の気が無いのは分かってる。
けどやっぱり奏の手だ。
優しい優しい、水神様の手だ。
「私は、水無月 奏様をお慕い申しておりました」
止めどなく流れる涙と共に放たれた言葉。
“私”としての言葉では無く“姫巫女”として放たれた言葉だと思った。
瞬間に辺りに響き渡る越天楽の演奏。
本殿を照らす光りがいっそうに強くなる。