神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
「もう私を一人にしないでね」
「当たり前だ」
肩を抱き寄せる奏はいつものように空を仰ぐ。
ふと香るキンモクセイの香り。
私からも仄かに同じ香りがした。
本当に夫婦になれたんだと実感した瞬間だった。
「キンモクセイってね、初恋って意味合いがある花言葉なの」
何のことか分かっていない様子だ。
不思議そうに私を見つめる奏は、自身からキンモクセイの香りがするとは分かっていないんだろうな。
花が散っても香りだけは覚えてるような、忘れられない初恋っていう意味があるんだって。
2人で澄んだ空を眺める。
既に夜は明け、太陽が私たちを照らしていた。
清々しい空だ。
奏にもたれるように、身を任す。
青いガラス細工で出来た綺麗な簪がキラリと揺れたーー。
ー終わりー