吐息のかかる距離で愛をささやいて
朝起きると、隣に俊はいなかった。


私が目覚めたとき、俊が隣で眠っていたことは一度もない。



いつも最後の方の意識が曖昧な私は、その後に俊が私の横で眠るのか、それとも自分の部屋に戻るのかすらも知らない。



初めて身体を重ねた朝、隣に誰もいないことに寂しさを覚えつつも、どこかほっとしていた。
その時の私は、恋愛に対して臆病になっていたから。


いまだに、それは変わらないと思う。でも、あれから俊と身体を重ねるたび、朝目覚めたとき俊がいないことをさびしいと思う気持ちが大きくなっている。


これを恋愛感情と言うのかはわからない。


俊は、そのことについて何も言わない。私をどう思っているのかわからないし、私が俊をどう思っているのか尋ねられたこともない。



私はそれに甘えてしまっている。



シーツに手を伸ばす。

空いてあったスペースにぬくもりはない。



ひんやりとした感覚が、私の心も冷ましていく。



思わずため息が出た。


いつまでもこんな生活続けて行けるわけないと思っている。


私にとって至れり尽くせりのこの生活は、俊には何のメリットもない気がするからだ。



だからと言って、何故、俊は私にここまでしてくれるのか。私はそれを尋ねる勇気はない。


それは、もし、万が一、俊が私を好きだと言った場合、私はそれにこ答えることができないからだ。

正確には、好きになったその先が問題なのだ。私たちの年齢の恋愛は結婚が切り離せない。女に至っては出産のタイムリミットもある。



私は、結婚したくない。子どもも欲しくない。



でも、俊がそれを望んだら?


私は、俊から離れなければいけないだろう。


そこまで考えて、思考をストップさせた。


ここから先は、考えたくない。



例え、近い将来答えを出さなくてはいけなくても。



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