吐息のかかる距離で愛をささやいて
それからの私と俊との間には、どこかぎくしゃくとした空気が流れていた。


そんなこと5年間一緒に暮らして一度もなかったのに。



そろそろ潮時なのかもしれない。


きっと、恋人でもない30代の男と女が一緒に住んでいること自体おかしいんだ。




あの家を出なきゃ・・・そう思うのに、それを俊に言うことも、新しい部屋を探すこともできない。




モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、あの夜から1週間が経った。



その週末、私は、涼子と瑞穂の出産祝いの下見に行く約束をしていた。


「私、今日、出かけるから。」


「わかった。俺も用事で遅くなる。」


「そう。」


1週間ぶりのまともな会話はあっけなく終わった。




瑞穂の出産はまだまだ先で、今すぐ出産祝いを用意する必要はない。



それでも2人で出産祝いを見に行こうと提案してくれた涼子は私のことを心配してくれているのかもしれない。



そんなことを考えながら涼子と待ち合わせをしている駅へと向かった。
< 21 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop