吐息のかかる距離で愛をささやいて
「瑞穂はね・・・私と同じだと思ってたの。」


「同じ?」



「私・・・子供が欲しくないのよ。」



「・・・・」



「彼氏も作らないでバリバリ働く瑞穂を見て、勝手に自分と同じだと思ったの。
 でも、妊娠したって聞いて、しかも仕事まで辞めるって聞いた時、ショックだったの。・・・ゴメン。違うわ。
 ショックを受けて、素直に祝福できない自分にショックを受けたのね。」



「そんなの、少なからず、誰にだってあるんじゃない?」


涼子の意外な言葉に私は、驚いた。


「私から言わせれば、瑞穂も夏帆もいい年こいて純情すぎるのよ。
 きっと、夏帆は祝福できない自分を責めて、瑞穂に罪悪感を感じちゃったんだと思うけど、誰だってそうでしょう?
 
 そりゃ、複雑な気持ちにくらいなるわよ。自分で言うのも嫌になるけど、私たち微妙な年齢だもん。」


確かに30代半ばの私たちははっきり言って微妙な年齢だ。


「夏帆は、瑞穂が不幸になればいいと思ってる?」


「そんなこと、思ってないわ!」


涼子の問いにあわてて首を振ると、涼子は笑った。


「じゃあ、いいじゃない。一緒に、幸せな瑞穂を妬みながら祝福しましょ?」


「妬みながら祝福って・・・」


「それにね、夏帆。一人取り残されたみたいな言い方してるけど、私も結婚してないんですけど!」


「え?でも涼子は彼氏いるじゃない。」


「そんなこと言ったら、夏帆なんて、イケメンと同棲してるんでしょ?」


「同棲じゃなくて同居だってば」


「やることやってんだから、一緒でしょ?」


「ちょっと!何言ってんの!」


昼間の公衆の場で言うことじゃない!!



それに・・・


「ホント・・・そんなんじゃないの。」


声のトーンを下げた私を涼子は不思議そうに見ていた。
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