吐息のかかる距離で愛をささやいて
「で?同棲中の彼とは何があったのよ?」


会話が途切れたタイミングで注文したパスタをフォークでクルクルしながら涼子が尋ねてきた。


見逃してはもらえないらしい。


「相手が何考えてるのかわからなくて・・・」


私も自分のパスタをクルクルしながら答えると、涼子は首をかしげた。



「どういうこと?」


「俊が、どういうつもりで私と暮らしてるのかとか、どうして私に優しくしてくれるのかとか。わかんないの。」


「うーん・・・そもそも夏帆は、その彼のことどう思ってるの?」



そう尋ねられて、私は返答に困った。



「わからないの。」


そう。自分で自分がわからない。


「じゃあ、彼に好きだって言われたらどうする?」


「・・・その気持ちには答えられない。」


「何で?彼が好きじゃない?」


「俊のことは・・・嫌いじゃないけど、その関係がずっと続くとは思えないの。」


嫌いじゃない・・・我ながらズルい言い方だと思う。


「ずっと好きではいられないってこと?」


「そうじゃなくて・・・その先。例えば、結婚とかは考えられないってこと。」


「何でよ。その俊さんとかいう彼、付き合うにはいいけど、結婚には向かないタイプ?」



そう尋ねられて、私は首を横に振った。



「俊は・・・いい旦那さんになると思う。」


「じゃあ、何が問題なの?」



「私は、子供が欲しくないのよ?結婚してうまく行くはずがない。」


「それは偏見よ。世の中、子供がいなくてもうまくいってる夫婦なんているわ。
 それに、その彼が子供が欲しいって言ったの?」


「俊とそんな話はしてないの・・・ただ・・・」



言葉を詰まらせた私を見て、涼子はため息をついた。



「私には、夏帆が自分の気持ちから逃げてる気がするわ。」



涼子の言葉は痛いところをついてくる。
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