密かに恋焦がれて
「何のことだ?とにかく落ち着け」
「ヒロと私の事を家で話したんでしょ」
「家には帰ってない」
「帰るって言ってたじゃない」
「俺だけ帰ったら変だし、いくら家同士の付き合いがあるからってお前とヒロを2人きりにしたなんて言ったら心配させるだろう」
「知り合いのところに寄ってたんだ。一応お前の帰りが遅くなるとは連絡は入れといたけど」
「あの荷物はなに?家に泊まる予定だったんじゃないの?」
「ああ、暇潰しに本でも読もうかと何冊か入れといたバッグの事か?」
本だったんだ……あんなこと言って荷物まで持っていって誤解してもしょうがない。
「でも朝まで戻らないって言ってたから泊まるつもりで出てちゃったんだと思ったの」
「本当に朝まで2人きりにするはずないだろう。ああ言えば琴美のヒロと話す覚悟が決まるかと思って、ヒロとはちゃんと話せたらしいし良かったな」
琴美はやっとヒロに騙されていたと気づいた。
「お父さんもお母さんもヒロといたことは知らないってことだよね?」
「そんなにおしゃべりじゃないぞ。それに俺が勝手に言うことじゃないだろ」