密かに恋焦がれて

「お兄ちゃん帰るね」

康成に声を掛けるとヒロと下の階に降りエントランスを抜けて外に出た。


「さっきの事はどうせ、からかってただけなんでしょ」

ヒロは琴美を自分の方に引き寄せると向かい合わせのかたちで立った。

「悪かったよつい反応みたくて。でも琴美の両親にはちゃんと認めてもらいたいと思ってる」

近い内に両親とおじさんにはちゃんとヒロと付き合う事を話さないといけない。みんな驚くかな……。

「それに帰したくないって言ったのは本当の事だ。このまま拐って何処かに閉じ込めときたい」

「ちょっと物騒なこと言わないでよ」

「会社のあの後輩にも本当は逢わせたくない」

あっ……
島崎には言いづらいけど話さないといけない。
傷つけてしまうかもしれないと思うと心苦しい。

「……っ!」

ヒロはいきなり琴美の頬っぺたをつまみ横に引っ張った。
直ぐに手は離されたが暫く痛みは残ってる。

「なにするの!痛いでしょっ」

「痛い?なら良かったな」

もう何なの……
痛さに涙目になりながら両頬を擦る。


「俺の前で後輩のことなんか考えるなよ」







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