密かに恋焦がれて
「島崎にはちゃんと……」
最後まで言えなかったヒロが琴美の唇を塞いだからだ。
満足したのかヒロから解放された琴美は息切れ状態でとても話しなどできそうにない。
代わりに睨もうとするとヒロの手が上がるのが見えビクッとするが予想に反して軽く頬に触れただけだった。
「赤くなってる。ごめんやり過ぎた」
ヒロは謝りながら琴美の頬を優しく擦る。
「自分でも驚いてる、こんなに独占欲が強かったなんて。こんなんじゃ琴美に愛想つかされてもしょうがないな」
躊躇いながら伸ばしたヒロの手は琴美の肩に置かれそっと抱き締める。
耳元でもう一度「本当にごめん」と謝られた。
見上げると不安そうにこっちを見ている。
たしかに今日のヒロはいつも以上に変だったし意地悪だった。でも……
「大丈夫、嫌いになんてなれないから」
ほっとしたのか息を吐くと琴美を離しそれから片手を差し出され戸惑っているとその手は琴美の右手を包む。
「これ以上遅くなると心配するよな。行くか」
2人は暗い夜道を先へと進んで行った。