密かに恋焦がれて
人好きな優しいおじさんの人柄は琴美も良く知っている。
そんなおじさんが一人息子を置いて別のところに行ってしまうなんて信じられなかった。
ヒロはおじさんと何度も話したそうだけど意志は堅かったようだ。
それから、まもなくアパートを引き払うとおじさんはその仲間の所へ行きヒロは新しいアパートへと引っ越す事となった。
お店の張り紙は全然効果がなくヒロ一人では大変だろうと暫く琴美は会社が休日の時に行けるときは手伝いに行っていた。
ヒロが配達に行き店番をしているとおじさんがやって来た。
2人はもう別々に暮らしているけどおじさんは時々はお店の様子を見に来るらしい。
琴美がいる日に来たのは初めてだった。
「弘高はいないのか」
「あっ!おじさん、こんにちは」
「琴美ちゃんは結構手伝いに来てくれてるらしいね」
「新しい人なかなか見つからないみたい。おじさんはここへ戻ってくる気はないの?」
「ここに戻るつもりはないんだよ。今の弘高なら大丈夫だと任せたんだ。琴美ちゃんもいるしね」
「でも私はここに来れるの休日くらいだし、そんなに役にはたってないかも」