密かに恋焦がれて
片手に持っていたはずの花束がない……
「向日葵が……」
「持ってる」
ヒロが持っていた。
支えていた手は琴美が立てるようになると離れていくそれから髪を撫でた。
「今回は大丈夫みたいだな」
何を言われたのか解った琴美が顔を赤くし俯く。
「フッ……そういう反応可愛いすぎる」
可愛いいとかそんな事を言うヒロにはいまだに慣れない。
こういうとき、妙にドキドキしてきて困ってしまう。
「ただいま」
「あら、向日葵」
リビングにいた母が向日葵に気づいた。
「ヒロから貰ったの」
「そうなのね、向日葵の花言葉知ってる?」
「えっ、花言葉?」
「幾つもあるけど代表的なのは……情愛、私はあなただけを見つめる、あなたを幸福にする」
あなただけを見つめる、情熱的な言葉……。
「お花やさんだからヒロ君もそういうの知っててくれたのかしらね」
やっと鎮まりかけていたのにドキドキがまた再発しそう。
あのヒロがそんな事を思って花をくれたのか……と考えてみる。
そんなロマンチックなことをするとは思えない。
「違うんじゃないかなぁ……売れ残ったからくれたんだと思う」