密かに恋焦がれて

「ああ、あの客か。たしかに凄く喜んでたな」

「お花って人を喜ばせるだけじゃなくて疲れてるとき一輪でも目の前にあると気持ちが落ち着いて癒されたりするんだよね。
そんなお花のことをもっと知りたくなったの、ここで仕事させて貰っていろいろ覚えたいの雇ってくれる?」

「本当に会社は辞めても後悔しないか?」

「しないよ」

「解った雇ってやる」

「じゃあ、これもう要らないよね」

持っていた張り紙は丸めてゴミ箱に入れた。
会社の方には近い内に退職したいと伝えるつもりでいる。

それから一ヶ月後、会社を辞めた琴美はフラワーショップの店員となった。
辞める前日、総務課でお別れ会&琴美の結婚祝いと称して飲み会を開いてもらった。

セッティングしたのは後輩の女の子達でそこは会社帰りに気軽に入れるようなイタリアンのお店だった。
課長からは一同を代表して結婚のお祝いの言葉を貰い、美味しいお料理を味わえてお別れ会はお開きなり帰ろうとしたところを島崎に呼び止められた。

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