密かに恋焦がれて

玄関を入ると男物の大きな靴がある。
お兄ちゃんが履くようなビジネスシューズとは違うスニーカー。

自分の部屋に行く前にキッチンに立ち寄った。


「もしかしてヒロ来てる?」


「ヒロくんね。今日は久しぶりに家に泊まって行くようよ。
でも明日は早く帰るって言ってたわ。
会社勤めとは違って土日に休めないのも大変ね」


「そうだね」


たしかヒロのとこのお店は火曜休みだったっけ。
明日は早く帰っちゃうんだ。


「琴美、夕飯の用意手伝ってくれる」


「着替えてくるね」


階段を上り自分の部屋に入る時に兄の部屋からはヒロの声が聞こえた。


小学生ぐらいの時は迷わず部屋に押し入ってたし一応遊びの輪にも入れてもらってた。中学年くらいになると押し入っても邪魔だと直ぐに追い出された……それにあの日から勝手に部屋に入ることも無くなりその内にヒロが家に来る事もなくなっていった。




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