密かに恋焦がれて
暫く待ったけど既読にならない。
軽くノックをすると中から返事が聞こえた。
ドアを開けて中には入らずお兄ちゃんを呼ぶ。
「入ってくれば良いだろう」と文句を言いながらもこっちに来た兄に母からの伝言を伝える。
「解った。あっ、そうだ。近いうちにこの家出てくから」
「出てく?」
今、聞こえて来た事が理解できずに聞き返した。
「暫くこの家を離れてみようと思う」
お兄ちゃんがが出ていくとは思わなかった。
この家を継ぐのはお兄ちゃんだと思っていたから……。
「ずっと?」
「ん?」
「この家には帰ってこないの?」
「いや、いずれは帰るよ。父さん達にはそう約束してるから。来週ここを出る、もう契約も済んでるから」
「もう契約まで済ませたの?」