密かに恋焦がれて

お兄ちゃんが階段を下りてくる音が聞こえた。


「ちょっと出てくる」


「どこに行くの?」


「ヒロのやつ携帯忘れたって店から電話してきた」


「ヒロが携帯忘れたの?」


お兄ちゃんは玄関の手前で立ち止まり振り返るとヒロのスマホをこっちへ差し出した。


「ほら……」


「えっ?」


「昨日は部屋でヒロと遅くまで飲んでて頭痛い。
お前が持っててやれ」


「私が?」


「頼んだぞ。俺はもう少し部屋で休むから」


「解った。これ届けてくるね」


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