密かに恋焦がれて
「……っ!」
ヒロに服の裾を引っ張られたせいで動けない。
「琴美送ったらそのまま帰るから心配するな」
話すのもしんどいのかお兄ちゃんは返事の代わりに片手を上げた。
「もう離して服がのびるよ」
「ん?」
「だから服を離してってば」
「ああ、そうか」
本当はヒロが服の裾を掴んでるそれだけなのにちょっとドキッとした。
プレゼントしたバッグは背中に今まで持っていたバッグを左手に持ち少しフラついてるようだった。
平気そうに見えたけど違った酔ってるみたいだ。
琴美が足を止めるとヒロは数歩進み振り返る。
「どうした忘れものか?」
「もうここで良いよ」
「お前んちまで行く」
「ヒロ、フラついてるし送ってくれた後でちゃんと帰れるか心配、良いよここで分かれよう」
「意識はしっかりしてる心配されるほど酔ってない……いいから行くぞ」
もう暫く一緒にいられる。
頬が緩みそうになるのをなんとか戻し何気ないふうを装い。
ヒロがまた歩き始めたため後を追いかけた。