密かに恋焦がれて
「話しって?」

琴美は島崎と並んで歩くが話しをしたいと言ったはずの島崎は何も話さない。


「ここではちょっと……」

島崎は周りを気にして見渡す。
ここはビルが多いため確かに人通りは多い。


「このまま行くと私の家まで行っちゃうよ」


急に足を止めた島崎にあわせ琴美も歩くのをやめた。

「一緒に来て下さい」

「ちょっ……島崎!」

「前進してください」

「はぁ?」

島崎は何を思ったのかいきなり琴美の後ろにまわると背を押し歩き始めた。

「そんなに押さないでよ、危ないったら」

島崎に押されて早いペースで歩かされ周りがよく見えない。
そして怖い……

「急かさないでっ、ちょっと止まってよ。もう転ぶってば」

島崎の押す手は止まった。



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