密かに恋焦がれて
あんな告白をされたあとだ今まで通りってわけにはいかない。
変に意識して仕事がやりづらくなるのは困る。
「真奈美ちゃんの彼氏役俺が引き受けてもいい」
「えっ?」
「断れなかったってことはその後輩君に何か今までと違うものを感じたってことかもしれない」
はっきり断れなかったのは島崎に何かを感じた。
何を感じたって言うの……わからない。
「ヒロのことを諦めろって事じゃない。ただ違う選択肢もあるってことだ」
それから数日、島崎が琴美に接する態度は告白前と変わらず。
あの日の事は悪い冗談だったんじゃないかと思い始めていた。
だとしたらデートの話だって立ち消えになるかも。
本当の所どうしたいのか決めかねてもいた。
退社時間を過ぎ琴美は着替えると下の階に降りる為エレベーター待ちしている所へ島崎もやって来た。
珍しく他に人はいない。
「この間の話し考えてもらえました?」
この数日、島崎からなんのアクションもなく安心していた琴美は不意打ちをくらい頭の中が真っ白になった。
「先輩乗らないんですか?」
声を掛けられ脳内は真っ白なまま琴美はエレベーターに乗った。