密かに恋焦がれて
あの話しは悪い冗談じゃなかったんだ。
「冗談て何ですかそれっ、そんな風に取られてたなんて本気であなたに伝えたのに酷いですね」
心の中の言葉のはずが声に出していたらしい。琴美と2人きりだからか島崎は不機嫌さを隠すこともない。
「軽く考えてたわけじゃないの。どうしたら良いのか解らなくて……ごめん」
「考えてくれるっていうから待ってたんですよ」
「そうだよね。ごめんね」
「悪いと思ってるなら左手出して下さい」
「何で?」
「良いから早く」
わけが解らないが持っていたバッグを持ち替え言われた通りに琴美が左手を出すと島崎の手と繋がれていて焦った。
「ちょっと!どういうつもり離しなさいよ」
ぶんぶんと振り回したけど島崎の右手と繋がったままだ。
「デートのこともう考えなくて良いです。その代わりこのまま降りるまで誰も乗って来なくて繋いだままでいられたらデートして下さい」
「もしこれからあと、止まって誰か乗ってきたら直ぐに手も離すし先輩の勝ちです。デートは諦めます」
「そんな賭けやるなんて言ってないっ離してよ」
またもや手を振り回すも島崎の手は離れなかった。