密かに恋焦がれて

「解ります先輩そんな顔してます。映画の時も本当は好きな人の事を想って泣いてたんじゃないですか」

「あれは映画のストーリーが切なくて」

「ヒロって好きな人の名前ですか?」

「えっ」

「泣いてるときヒロって呟いたの聞こえました。好きな男想って泣いてる先輩なんて見たくなかった」

私、無神経だった。

「ごめん……」

しばし沈黙が続いた後

「そろそろ戻りますか」

「そうだね」

2人は無言のままボートを進めた。

乗り場につくとお兄ちゃんと真奈美が見えホッとしたのもつかの間2人も乗ってくるという。

「お兄ちゃん達も乗るの?」

「ああ、しばらく待っててくれ」

「分かった。
真奈美、後でね」

2人がボートに乗って行ってしまうと島崎と2人きりの気まずい沈黙が続く。
琴美は賭けをしてデートが決まった時の島崎の顔をふと思い出した。
あの時の島崎君は嬉しそうな顔してた。
きっと今日は楽しみにしてたはず。








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