密かに恋焦がれて
「最近、店の前通ってないだろ?
この間も様子へんだったし」
あからさまな態度をとっていたのだから気づくのは当然だろう。
「俺、何かしたか?」
琴美は一言も話すことができなかった。
突然ヒロが現れた事にも動揺していたしこの場でヒロが納得する言葉など思い付かない。
「何かあるなら言えよ。あんな態度取られたら気になる」
「……」
何をどう言えば良いのか……焦る。
「言いたくないのならいい」
ヒロは痺れを切らしたようだ。
「この間の……康成から聞いたけど彼氏なんだってな。
康成が好青年だって言ってたぞ……良かったな」
良かった……そんなことヒロから言われたくない。
「何が良かったな、なの?
私に彼氏ができたからってなんでヒロが嬉しそうにしてるの?」
「良かったって言うのが気に入らないならなんて言えばいいんだ?」
「そんなの自分で考えて。全然違うしそんなんじゃない」
「何が?」
「島崎は彼氏じゃない私達付き合ってない」
「付き合ってない?でも康成は……それにさっきのいい雰囲気で歩いてたのはなんだったんだ?」