痛快! 病ンデレラの逆襲
うわぁぁぁ! 何てことしてしまったのぉぉぉ。
いくら熱があったとしても、信じられない、あの日の自分を葬り去りたい。
あれから高熱が出た私は社長の命で病院送りとなった。
医師の診断で、何と! 私は細菌性髄膜炎と診断されたが、幸いにも治療が早かったので一週間の入院で済んだ。
後で聞いたが、死亡する場合もあるとのことだ。
社長! 貴方は命の恩人です、とこの時は思った。感謝もしたが……それとこれとは別問題だ。
頭を抱えていると、シートベルトを外しながら社長が訊ねる。
「お前、何をしているのだ?」
仕事には復帰したが、退院してから社長の態度が激甘だ。
例の如く、顧客先への送迎は勿論、出退勤まで送迎する始末。
とにかくベタベタなのだ。
「また、熱がぶり返したのか?」
大きな掌を私の額に当て、「大丈夫だな」と頬を撫でキスしようとする。
以前もこんな風に触れてきた。
あの時は父母のように思っていて……でも、好きとか言われたら、意識してしまって……うわぁぁぁ、恥ずかしい!
「だっだだだ大丈夫です」
「何故テンパる? それだけの言葉を噛む?」
質問を聞かなかったことにして、車から飛んで逃げるように降り、エレベーターに飛び込む。
チラッと社長を見ると、彼は笑っていた。その社長を放置し『閉』のボタンを押す。
「姫、いいわぁ、その悲壮な顔」
部所に飛び込み、ハァハァと肩で息する私を真梨香様はジロジロと舐めるように見る。そして、開口一番、恍惚とした表情で言う。
「追い詰められ必死にもがく獲物のような姿は美しいわ。今の貴女はそうその獲物よ!」
短い腕を突き出し人差し指で私を指す。
真梨香様って……変なところで鋭い。
「でもね、もっと美しいのは追い詰めた相手を逆に追い詰め、組み敷く姿よ。頑張ってね」
真梨香様はポンと私の肩を叩き仕事に戻る。
頑張れ? 組み敷く……社長を? ナイナイ! それはないわ。