痛快! 病ンデレラの逆襲

と思っていたら……。

「おい、俺は嬉しいけど、ちょっと大胆過ぎないか?」

床に横たわる社長がニヤリと笑う。

「あらぁ、早速、組み敷いちゃっているの?」

真梨香様とケータリング部門ご一同様が円を描いて私たちを見下ろしている。
ヘッと我に返る。
社長を覗き込むように床に手を付く私の姿は……なるほど、組み敷いている。

「あっ、いえ、全然違います!」
「何が違うんだ」

社長が下から呑気な声で言う。

「それより、そろそろ立ち上がらないと、皆の前でイヤラシイことするぞ」

私にだけ聞こえるように小声で囁く。
それは回避したいと「ワッ!」と悲鳴を上げ、すぐさま立ち上がる。

「これはですね、その本の山を抱えてですね、歩いていたらですね、何故か社長が……。社長、何をやっていたんですか!」

ジロリと睨む。

「ああ、ちょっと考え事をしていて、いいアイディアが浮かばないかと逆立ちしたところにお前がタイミングよく蹴躓いて倒れてきたんだ」

タイミング悪くだ!
で、どうして、こんな廊下の真ん中で逆立ちしているのですか!

「なぁんだ、つまんない」

真梨香様はたちまち興味を失ったようだ。
「さあ、仕事仕事」と厨房に入って行く。

その後をゾロゾロとケータリング部門ご一同様が続く。
皆つまらなそうな顔で……。

いったい皆は何を期待していたのだろう? 首を捻る。

そんな私を社長は面白そうに呑気に見つめている。
社長! この事態は貴方が招いたんですよ、反省して下さい! ったく!

「お詫びにこの本を全部片付けておいて下さいね!」

何のお詫びだ、と社長が私を見るが、完全放置だ。
フン!

< 105 / 165 >

この作品をシェア

pagetop