痛快! 病ンデレラの逆襲
「貴女、誰?」
美麗が夢子に訊ねる。
夢子はフッと鼻で笑うと、徐に名刺入れから名刺を一枚取り出し美麗に渡す。
「まぁ、ミーヤ・猫田様のところの!」
得意先の本店店長と分かり、美麗は手の平を返したように愛想良くなる。
「いつもお世話になっております」と妖艶に笑むと自分も名刺を渡す。
そして、やはり社長との仲が気になるのかライバル心剝き出しで訊ねる。
「ところで殿……殿宮社長とはお仕事絡みのお知合いですの?」
夢子がジロリと見る。
「何故プライベートなことまで貴女にお知らせしなくちゃいけないの?」
腕を組み美麗を見上げる夢子の顔は明らかに怒。
しばし二人の睨み合いが続く。
どう見てもコブラ対マングース! 非常に恐い。
「って言いたいところだけど」
夢子は口角をクイッと上げ、天使の笑みを浮かべる……が、さっきよりもっと恐い。
「私はこの子、殿宮社長の婚約者、姫宮姫乃の保護者。この子を苛めたら、お分かりよね。こう見えて、私って公私混同するタイプなの」
それは駄目でしょう、と夢子を見る。
それに、この子って、私の方が年上なのですが……と思っていると、再び夢子は毒を吐く。
「あのね、私、ミーヤ・猫田のお気に入りなの。これ、どういう意味かお分かりよね、花菱美麗様」
物凄い迫力。
男らしい! まぁ、戸籍上男だけど……。
「愛染様、少し誤解があるようですが、私はそのようなことは……」
少し狼狽え、ホホホと口に手を当て、美麗は「ごゆっくりしていらしてね」とそそくさとその場を逃げ出す。
「フン、私に勝とうなんて百万年早いのよ!」
夢子は美麗の背中に向かって、立てた親指を下に向けサムズダウンのサインを送る。