痛快! 病ンデレラの逆襲

首を傾げながらも身支度を済ませ、朝食の準備に取り掛かる。
食事の支度をしている間に、私はいつも目覚めていく。
そして、朝食を食べ終わる頃、完全に目覚める。

今朝は大根と人参と厚揚げの味噌汁、鮭の粕漬け焼き、煮豆と炊き立ての五穀米。

モグモグと口を動かしながら、夢の中で夢を見るって、ややっこしい夢だったなぁ、と思い返しながら、アッと思い出す。

そうだ! あのリング……もしかしたら!

「お食事の最中は立ち歩いてはいけません!」

お千代さんに注意を受けているが、居ても立っても居られず、すぐに押入れを開ける。

ゴソゴソ探すうち、あった!
幼い頃、母から貰った宝石箱。母が亡くなった後、見たくなくてズット段ボール箱の奥底に入れっぱなしだった。それを食卓に置く。

ゆっくり蓋を開けるとシルバーに輝くリングが一つ。
それを抓み、目の高さまで上げる。
昔と変わらない光沢に、それが本物のプラチナリングだと、今、分かる。

あの子が誰だったか、今は関係ない。
あの天使は夢でも幻でもなく、本物の男の子だったんだ。
それが無性に嬉しくて。寝覚めの悪さも気分の悪さも一瞬で吹き飛んだ。

私は身に付けていたネックレスを外すとそれに指輪を通す。
仕事中、外した指輪をこれに通し首にかけておけ、と社長がくれたものだ。

もう一度付けると指輪を撫でながら、社長の言葉を思い出す。
彼は私を愛していると言ってくれた。信じてくれと言った。

あれが夢だったか現実だったかは分からない。
でも、私は社長を信じる。

二人から貰った指輪が、胸元でチャリンチャリーンと心地良い音を立てる。
ウン、今日も頑張れそうだ。

私は残りの朝食を勢い良く口にする。
少し冷めたけど、やっぱり冬はお味噌汁が最高に美味しい!

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