痛快! 病ンデレラの逆襲
髪をすく優しい手が頬に触れる。
「起きたか?」
「社長! お加減いかがですか?」
「お前のお陰で良くなった」
額の冷却シートを剥がし、掌で熱を測る。
「本当ですね。すっかり下がりましたね」
「シャワーを借りていいか」
「駄目です。お風呂入れてきます。ゆっくり温まって下さい」
身を起こそうとすると、社長の手がそれを止め覆い被さってくる。そして、フワリと唇にキスを一つ落とす。
「お前も一緒に入るか?」
朝っぱらからフェロモンダダ漏れの顔で、何を言う!
アワアワと口を動かし社長を押し退けると、脱兎の如く浴室に向かう。
全く、ちょっと良くなるとふざけるんだから!
プリプリしながら自身の洗面を済ませ、新しいタオルと使い捨ての歯ブラシを用意し、洗面台の上に置く。
でも、熱が下がって良かった、とホッとする。
「社長、昨日のワイシャツまだ生乾きですので、もう一枚のビッグTシャツを少しの間着ておいてくださいね」
暖房を入れたから、すぐに乾くだろう。
そうだ、下着がない!
「ちょっとコンビに行ってきます。お湯が溜まったら入って下さいね」
脱衣所の籐チェストから裏起毛のスエット上下を取り出し、着替えるとお財布を持つ。
「えっと、社長……そのぉ……おパンツはMでいいですか?」
襖の陰からソッと覗き見て社長に聞く。
「ああ、Mでいい。何だ、お前、俺の下着を買いに行ってくれるのか」
ニヤリと笑い、ヨッと起き上がる。
ワワワと襖の陰に隠れる。
「夫婦みたいだな」
襖の陰から顔を出し肩越しに私の顔を覗き込む。
「真っ赤だ、可愛いな」
ワッと飛び退き、それ以上言わないで下さい、と部屋を飛び出しコンビに向かう。
もうヤダ、社長ヤダ!