痛快! 病ンデレラの逆襲
今日、私はお休みだからいいが……と時計を見る。午前八時四十八分。
それから、呑気にコーヒーを飲む社長に視線を向ける。
貴方はお仕事ではないのでしょうか、とホワイトボードに書かれていたスケジュールを思い返す。
「社長のゾンビのような回復力にはいたく感銘を受けました」
だからちょっと促してみる。
社長はコーヒーカップの向こうから、訝し気に私を見る。
「それは褒めているのか、貶しているのか、どっちだ」
「そりゃあ、褒めているんですよ。というわけで、すっかり回復なされたのなら、お仕事に行かれたらどうですか?」
フンと鼻を鳴らし、コーヒーを飲み干すと、カチャンとカップをソーサーに戻す。
「お前は俺との話を避けようとしているな」
ドクンと心臓が音を立てる。
「逃げるな。現実を見ろ」
「社長……言っている意味が分かりません」
「じゃあ、お前は誰の紹介で我が社を受けたのだ」
それは……前の会社を……そうだ、料理がしたくて退職したんだ。
あれっ? 本当にそうだったのかな……。
誰の紹介? それはお千代さんの知人があのアパートと職を……。
駄目だ。また霧がかかったようにぼやける。
「お前は千代さんの知人の紹介だと思っているらしいが、それは全てお前が作り出した幻想だ。千代さんは二年前に亡くなっている」