痛快! 病ンデレラの逆襲

社長は何を言っているの?
私はズットあのアパートでお千代さんと暮らしてきた。
キッと社長を睨み、バンとテーブルを叩き立ち上がる。

「出て行って! 今すぐ」

腕を真っ直ぐ伸ばし玄関を指す。

「社長なんて大嫌いだ! いい加減なことを言わないで!」
「落ち着け! 怒鳴らなくても聞こえている」

社長は立ち上がるとインスタントコーヒーをもう一杯自分で淹れ、椅子に座る。

「俺はお前のことも千代さんのこともズット前から知っていた。千代さんが亡くなったと知らせを受け、すぐに駆け付けた」

社長はカップに口を付け、コクリと一口飲む。

「葬儀の間中、お前を見ていた。お前は抜け殻のようだった」

社長の声が遠くに聞こえる。

「それからお前は引き篭もった。仕事にも出られなくなり結局クビ。寮も追い出された。このアパートに引っ越させたのは俺だ。これは俺の持ち物だ」

社長のアパート……? だから、すんなり私の部屋に入れたんだ。
他人事のような声が頭に響く。

< 138 / 165 >

この作品をシェア

pagetop