痛快! 病ンデレラの逆襲

「一時的な仮の宿だったのに、お前はあのマンションに越さないし、本当、お前は頑固者だ」

億ションのことを言っているのだろう。
社長は極端過ぎる。馬鹿だ。天と地も違う物件を、どうだ、と与えられても、分不相応だと拒絶するのは当たり前だ。

やはり社長は別世界の生き物だ。
ああ、そうか。だからこんなことが考えられるんだ。

「今、お前が何を考えているのか知らないが、千代さんは亡くなっている。これが事実だ」

じゃあ、二年近く一緒に暮らしていたお千代さんは何? 私が作り出した幻影とでも言いたいの!

「姫、ちょっと来い!」

社長は立ち上がると、私の手首を掴みお千代さんの部屋の方に歩き出す。

「やだ! 社長、入りたくない!」

そこはお千代さんの部屋だ。勝手に入っちゃいけない。
社長の手を振りほどこうと必死に抵抗する。

「やだ、社長、止めて、開けないで!」

声の限りに叫ぶ。

「入るんだ。そして、ちゃんとその目で見るんだ」

襖が開けられる。
誇り臭さが鼻腔に入る。冷たい空気が身体をすり抜けて行く。

「しっかり目を開けて見ろ!」
「やだ! いやだ!」

社長は背中から私を羽交い締めして、激しく振る頭を抑え込む。
目の前には仏壇。そこに三人の写真が飾られていた。
父と母……そして、お千代さんの……。

「いやぁぁぁ!」

声を限りに叫ぶとプツリと意識がなくなる。

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