痛快! 病ンデレラの逆襲
「だが、お前は強くなっていた。もしかするとメープル荘の皆のお陰か? その後も千代さんは不在だったろ」
また、コクンと頷く。
「あのことがあってから、お前をもう独りにしておきたくなかった。熱に浮かされムードもへったくれもなくプロポーズしたのは悪かった」
社長は本当に申し訳なさそうな顔をする。
「俺の中でお前への気持ちが溢れてしまった。一緒に暮らしたいと心から思った。お前が欲しい」
社長の思いにキュンと胸が締め付けられる。と同時に今までのことを思い返す。
そして、そう云えば、と思い出す。
ずっと不思議だった。私が働くまでお千代さんはどうやって生活費を捻出していたのだろうと。
遺産で生活していると思っていたが、よく考えたら借金返済でほとんどなくなっていた筈だ。
「もしかしたら、社長が……私たちの暮らしを支えて下さっていたのですか」
「ああ、起業し軌道に乗るまで、まだまだ力不足だったがな」
社長は膝の上に座る私の頬を優しく撫でる。
その手の上に自分の手を重ねる。
「いいえ、感謝しています。ありがとうございました」
フッと社長は目を細める。
「千代さんと初めて会ったのは教会だった。小さな頃ね」
見上げると社長は意味有り気に口角を上げている。
「事故で亡くなった俺の両親は敬虔なクリスチャンで、その縁もあり俺は教会で育った」
社長も苦労したんだ。
「それから少しして、彼女は俺の遠縁だと言った。千代さんもズット知らなかったようだ」
お千代さんに親類がいた?
「院長先生と話すうち、俺が血縁者かもと思い、調べたらしい。それから時々様子を見に来てくれた。嬉しかったよ。会いに来てくれる人がいるっていうのは。それに……」
フッと笑い、私の髪を撫でる。
「俺に生きる希望を与えてくれた」
「希望?」
「ああ、とても可愛いお姫様に会わせてくれた」