痛快! 病ンデレラの逆襲
そして、その日の夜。私はまたしても拉致られた。
社長と約束がある、と言ったのに、じゃあ社長もご一緒に、と無理矢理。
「やっぱり冬はコタツに鍋よねぇ。美味しいわ」
「要子さん、夢ちゃんの料理はコタツでなくても美味しいわよ」
ミミが夢子にニッコリ微笑む。
部屋は満員御礼。もしかしたら床が抜けるのでは、と心配になり、夢子の部屋が一階で良かった、とちょっとだけホッとする。
「本当はトマト鍋にしたかったんだけど、本日は殿方もいらっしゃるからトマトカレー鍋にしてみました」
グツグツと音を立てる鍋から胃を刺激するカレーの香りが漂う。
「リコピンたっぷりのトマトは生で頂くより調理する方が吸収率が高まるから鍋は打って付けなのよ。それに『幸せホルモン』と云われるセロトニンの分泌に最適な食べ物がカレーなの」
「夢ちゃん、私たちもっと幸せになっちゃうわね」
ウフッとハートマークを浮かべるミミ。
「今日もウォーキングしてきたから、まだまだ大丈夫よ」
梨子が肉団子をハフハフしながら口に入れる。
「姫、どんどん食べなきゃ梨子ちゃんに全部食べられちゃうわよ」
夢子が私のとんすいを取り上げ、ポイポイと野菜や肉を入れる。
「ありがとうございます」
「で、社長はいつ来るの?」
「はい、さっきメールがきて、もうすぐ着くとのことです」
時計を見ると七時を少し過ぎていた。
「入口さん、今日はお仕事?」
「そうみたい。凄く悔しそうに残念がっていたわ」
要子の問いに梨子がニタリと悪女の笑みを浮かべる。
もしかしたら、彼女、真梨香様同様Sなのでは?
「それにしても、このメープル荘が姫の社長のものとは」
「本当、驚いちゃった。このまま住まわせてもらえないかしら?」
梨子が本気口調で言う。
「それは有り得ないわよ。だって、この辺りは地価が凄く高いのよ。固定資産税だけでも馬鹿にならないんだから、貴女たちが払っている家賃なんて目クソ耳クソの足しにもならないわ。あんな金額でここを貸すなんて……姫のお陰かもよ」
こんな美しいミミの口から、まさかのクソ発言。
ミズ・ミミ、私はそちらの方が驚きです。
そして、今の貴方のご意見は間違っています。
だって、私より入居年数が長いのはお三人ですもの、と熱々の豆腐を口に入れる。