痛快! 病ンデレラの逆襲
彼にキスをされたら思考が停止する。私は早口で言葉を続ける。
「でも、結婚も引っ越しもメープル荘が壊されるまで待って下さい」
「じゃあ、明日にでも取り壊そう」
ハァ? そんなことできる筈がない……こともない……かもしれない。
本気モードの社長の顔を見てガクリと肩を落とす。
武士に二言はないの如く、彼ならきっとやる。絶対壊してしまう。
「秋までの約束でしょう。それまで壊しちゃダメ! 他の皆も困るもの」
「壊さないから、すぐ結婚しろ。何なら、今から婚姻届を出しに行くか」
脅迫か? ムチャクチャだ。だんだん腹が立ってきた。
「社長、これ以上無理強いするなら、結婚しません!」
ハッと社長は身を引く。
「お前、本気で言っているのか?」
「はい。そんな傲慢な人と結婚したら、きっと結婚しても上手くいきっこありません」
社長はムッとむくれ、「俺は傲慢じゃない」と宣う。
イヤイヤ十分傲慢だ。
「俺は早くお前を俺だけのものにしたいだけだ」
「私はものではありません」
不貞腐れた社長が可愛くて、もう少し抵抗してみようとフンとそっぽを向く。
「お前が頑固だとは知っていたが、こんなに強情だとは思っていなかった」
「嫌いになりました?」
「いいや、俺は小悪魔も好きだ。今のお前は以前以上に魅力的だ」
社長はニヤリと笑い、唇にキスを落とす。
「だが、俺はどんなお前でも放しはしないがな」
再び落とされたキスはコタツも要らないくらい熱く、心も身体も溶けそうになる。