痛快! 病ンデレラの逆襲
「彼女、作家梨梨子としてFクラスの協賛者となってくれた。そして俺はメープル慈愛財団の理事に就任した」
エッ、陰でそんな話が進んでいたの。
「お互いの利害が一致したのよ」
「利害?」
梨子は訊ねる夢子に一瞬視線を向け、タコと胡瓜のピンチョスをパクンと食べる。
「ウーン、美味しい。そう、ここに住まわせてって頼んだの。だって、このマンションの名前、『メープルプリンセス』よ。メープル荘の姫が住む場所よ。私が住まないで誰が住むのよ」
「呆れた。その姫とはこの姫のことよ」
要子が私を指す。
「あらっ、そうなの。でも、事実はそんなに気にならないわ。私には物語の舞台が必要なの」
ヤレヤレと要子は肩を竦める。
「いや、それだけじゃない。俺も望んだ。姫のために一人でもいいからメープル荘の住人が側にいて欲しいと。というわけで、いろいろ利害が一致してね」
「あらっ、それなら私たちだって協力するわ」
ミミがキラキラと目を輝かす。
「これでも一応、経営者ですから」
それからあれよあれよと話が進み、ミミもFクラスの協賛者と財団の理事となり、夢子と要子はFクラスの協賛者となった。
「本当は心苦しかったのよ。あんな格安でここを借りるのが。いっそ購入しちゃおうかとも思ったわ」
ミミがニッコリ微笑み「でも、これで気持ちが楽になったわ」と息を吐く。
「そっ、だからもう難しい話は抜きにして、頂きましょう。こんなに姫が作ってくれたんだから」
梨子がシーフードピザに手を伸ばす。
「今日も入口さんは泣く泣く仕事に行ったわ」
「エッ! 一緒に住んでいるの?」
「まぁね。彼、私を一人で置いておけないですって」
それはご馳走様、と要子がワインを口にする。
「で、要子はどうなっているの? 例の御曹司とは」
梨子の言葉に皆の眼が一斉に要子を見る。