痛快! 病ンデレラの逆襲
「でも、こんなド派手な高級車に乗る必要、全然ないと思いますが……」
ちょっと癪なので、わずかな抵抗を試みる。
「だから、お前はド貧乏から抜け出せないのだ」
だが、抵抗空しく、鬼畜にもドの付く貧乏と断定される。
やっぱり前言は撤回しよう!
「俺は伸し上がってきた人間だ。今日、お前が出会う、榊原や水佐和などという生まれた時からサラブレッドなホワイトとは違う。嗚呼、お前も元はホワイトだったな」
殿宮社長が嫌味な笑みを浮かべる。
黙らっしゃい! ブラック!
「だからだ、ド派手にアピールする必要があるのだ。富裕層の奴等に面白い奴だと目に留められ、認められれば、仲間に入れてもらえる。バリアを抜け、彼等の世界に入り込めたら、もうこっちのものだ」
嗚呼、なるほど。そう言えばそういう世界だったかもしれない。
祖父の周りにいた人間は皆、お金持ちばかりだった。
それが当たり前で疑問にも思わなかったが……彼等の周りを見えないバリアが覆っていた。
まるで害虫を寄せ付けないみたいに。
それは当然、祖父の周りにもあった。
だが、祖父が亡くなり没落するや否や、バリアは消え失せ、それに比例するかのように、お金持ちのみならず、祖父やその先代に恩ある人までもが、姿を消した。
まるで私たち家族が害虫のように、避けるように。
ショックだった。
残ったのは、お千代さん唯一人だった。
あの時思った。
この世はなんて、非業でシビアな世界なのだと。
「それに……」と社長が話を続ける。