痛快! 病ンデレラの逆襲

「メインである本日のお粥は『大根粥』です。お好みで別皿にある大根葉のごま油炒めや黒酢を合わせて頂くと、また違う味わいとなります。お試し下さい」

店員は最後に「ではごゆっくりおくつろぎ下さい」と言って、その場を辞した。

「話は後だ。まず、食おう。冷めては美味くない」

お粥から立ち上る大根の香りが胃袋をキュンと掴む。
両手を合わせ「いただきます」をし、レンゲを手に取り、一口、口に入れる。

ハーッ、胃に優しい食べ物だ。

「社長、美味しいです!」

お千代さんのことも彼への怒りも忘れ、笑みを浮かべもう一口お粥を頬張る。

「そうか、美味しいと感じられるならいい。存分に食べるがいい」

社長の目尻が少し下がり、口角が少し上がる。

「はい、もちろんです! 社長も召し上がって下さい。午後も猛殺的なスケジュールとなっているんですから、いっぱい食べて頑張らないと!」

社長は「現金な奴だな」と柔らかな笑みを浮かべ、何故かまた私の方に腕を伸ばす。アッと思っている間に、社長の指が私の口元を拭う。

「お前は子供か! ゆっくり食べろ」

そう言うと、たった今拭ったばかりの親指をペロッと舐める。

その様に父の姿が浮かび、「お父さんみたい」と知らぬ間に口から言葉が零れていた……ようだ、途端に社長の機嫌が悪くなる。

「お前は大馬鹿か! 誰が父親だ!」

あっ、そりゃそうか、五歳しか離れていないのに、お父さんはないわ。失敬、失敬。

「すみません。お兄ちゃんみたい」と言い直したが、火に油を注いでしまったようだ。

何がいけなかったのだろう?

< 38 / 165 >

この作品をシェア

pagetop