痛快! 病ンデレラの逆襲

これでは、死んでよかった、と言っているようなものだ。
そんな風に身内を思うなんて……。
本当、血も涙もないとはこのことだろう。

そう、私は病んでいる。

他者に対する配慮も感情も乏しいうえ、涙を何処かに置き忘れてしまった。
だから、母の葬儀の時も、父も葬儀の時も、一滴の涙も零れなかった。

こんな私は人間失格。
私こそが、本物の妖怪なのかもしれない。

それでも人として生きていかねばならない。
唯一の拠り所、お千代さんのために。

自転車にまたがり、天を仰ぐ。
そして、金木犀の香る澄んだ空気を思い切り吸い込む。

ん~、気持ちいい!

よし、参るとしましょうか! 生きるため、食料調達に!
グッとペダルを踏む。

おお、寒い。
十一月に入った途端、急激に下がった気温。
これからの季節、自転車での長距離は辛いなぁ、とペダルを漕ぐ。
でも、今日のように抜けるような青空の下、風を切って走るのは気持ちがいい。

トイレットペーパーに豚コマ肉、牛乳と卵、会社で見た特売チラシを思い出し、ゲットするぞ! と闘志を燃やす。

黄色く色付き始めたイチョウの並木道を走り抜け、赤く色付く紅葉に目をやりながら私はスピードを上げた。

お千代さん、待っていてね!

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