痛快! 病ンデレラの逆襲
「そうか、お前は遊びも知らず、お嬢のままか」
社長は目を細め私を見る。
「なら、今夜、お前に夜遊びの経験をさせてやる。明日、水曜日は休みだろ」
「エッ、でも、お千代さんが……」
「俺から千代さんに断りを入れてやる。それならいいだろう。人生経験も無しに深い味わいは作れない。これは業務命令だ」
また、命令。
「それにな、柳の如くだ。聞いたことがあるだろ。遊び心がないと、いずれポキッと折れてしまうぞ。心も身体も」
お粥に大根葉を入れる社長の姿が、妙に眩しく見える。
だから、思わず手を合わせてしまった。
「社長、たまにはいいこと言いますね。有り難いお言葉、ありがとうございます」
南無南無と呟いた途端、バチンとデコピンされる。
「痛いじゃないですか」と額を押え、尖った視線を向ける。
「お前が縁起の悪いことをするからだ。俺は生き仏になるつもりはない。で、返事は!」
せっかく褒めてあげたのに……と唇を突き出しながらも、まっ、今日は許してあげよう、寛大になる。
だって……何となく、社長が優しく見えるから。
だから、ちょっと素直になってみた。
「はい、了解しました。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、その反応が思いがけなかったのか、社長が驚く。
そして、今まで見たことのない柔らかな笑みを浮かべた。
私の方が驚きだ!