痛快! 病ンデレラの逆襲
梨子の運転で連れてこられたのは夢子の勤める美容院。
美容界の大御所、ミーヤ・猫田のトータルビューティーサロン『エメラルド・キャット』の本店だった。
「キャッ、嬉しいわ。お役に立てるなんて」
著名人も数多く利用する店として有名で、要子のところのアイドルや女優もここの客だそうだ。
「店長が夢子だから、無理がきくのよ」
シャンプー台で目隠しされた状態の私に梨子が言う。
「へ~、デートなの」
カット台に移された私に鏡越しに夢子が言う。
「デートじゃありません。業務命令です」
梨子と夢子は顔を見合わせ、そう思っているのは本人だけね、とニシャリと笑う。
物凄い誤解をされているようだが、言い訳するのも面倒臭いので、放置だ。
「まっ、とにかく、綺麗にしてあげる。夜遊び初体験記念に」
鏡の向こうからウインクが飛んでくる。
何かこう、おちょくられているような……。
「で、要子さんはまだ来ないの?」
ヘッドマッサージをしながら夢子が聞く。
「さっき、ラインにメッセージが入ったわ。後、五分で着くって」
何故、ここで要子の名前が出るのだろう、と不思議に思っていると「お待たせ」と声が聞こえた。