痛快! 病ンデレラの逆襲
「どんなの? 見せて」
要子は透明袋を外すと、ハンガーにかかった服をピランと吊り下げる。
「どう? 姫にピッタリだと思わない? そして、こっちはコート」
「サンプル衣装? またレンタルしてきたの?」
「そう。毎度お馴染み、メーカーさんにお借りしました」
それは職権乱用ではないだろうか?
「思う! 思う! 本当、姫にピッタリ! 流石、要子。やっぱりスタイリストに転職した方がいいんじゃない」
梨子がパチパチ手を叩く。
「久し振りだったけど、チョイスするのに腕が鳴ったわ。本当、できるなら、即したい」
要子が苦笑いを浮かべる。
「色白の姫にあえて白かぁ。いいんじゃない。デザインもシンプルだし、化粧でメリハリ付けられるわ。コートは温かみのあるペールピンク、じゃあ……」
皆さん、勝手なことをおっしゃっていますが……。
「無理です、似合いません。こんな素敵なワンピース」
ブルブル首を振り拒否するが、三人は素知らぬ顔で会話を続ける。
「ルージュはピンク系で目元は美人顔を生かしてブルー系ってとこね。本当は髪色をもう少し明るくしたいけど、時間がないからアップに結っちゃうわね」
夢子に続き、要子がバッグから箱を取り出し言う。
「それと、洋服に合わせてアクセサリーもチョイスしてきたわ。イミテーションだけど、ここの品は精巧に作られているから安っぽく見えないのよ」
「あっ、それ、ミズ・ミミの作品! 私も何品か持っているけど本物より本物よね。本当、素敵」
アクセサリーを目にした途端、一瞬、夢子の動きが止まる。
だが、それに気付いたのは私だけだったようだ。
夢子は何もなかったかのように、すぐ手を動かし髪を編み込んでいく。
「彼女、一年前、彗星の如く突如現れたジュエリーデザイナーだけど、今や押しも押されぬ有名デザイナーよねぇ」
要子は手にしたネックレスをウットリ眺めながら言う。チラリとその姿に目をやる夢子の顔が一瞬曇る。
何だろ? 今の夢子の反応……。
不思議に思いながらも、今は他人に構っている暇はない、と鏡に映る自分の情けない顔を見る。