痛快! 病ンデレラの逆襲
遊園地の中に入った途端、私は口をアングリと開け、目を見開いた。
「ウワァー」
目の前にあるのは、幻想的な光の世界だった。
街で見るイルミネーションとはどこか違うその様に、テンションは上がる一方で、落ち着きなくキョロキョロ瞳を動かす。
「社長、メチャクチャ綺麗ですね」
「ボキャブラリーのなさはピカイチだな。お前、さっきからそればっかりだぞ」
「この景色ですよ。その言葉しか思い浮かびません! 本当に綺麗ですね」
フト思い出す。絵本の挿絵で見た、天上にあるという星々の世界。今、目の前にある風景が、その世界と重なる。
父も母もミイちゃんも……こんな綺麗なところに居るのかな……。
それならいいが、と皆の笑い顔を思い出していると……。
「寒くないか?」
遠くの方から社長の声が聞こえ、ハッと我に返る。
「……ハイ?」
おっといけない、彼方に飛んでいる場合ではなかった。
「どうした、ぼんやりして。寒くないかと聞いたんだが」
社長が心配そうに顔を覗き込む。
「あっ、はい。大丈夫です。このコート、とっても温かいです」
要子のチョイスしたペールピンクのチェスターコートは、ロング丈で、軽やかだが、防寒効果は抜群だった。
「じゃあ、その服とコート、アクセサリー全て買い取ろう」
「社長、大盤振る舞いは結構です。ご遠慮致します。それより、目立っていますよ。見られていますよ」
普段よりカジュアルな装いだが、ダークブラウンのダブルブレストコートもブラックのレザーパンツも、モデル並みのスタイルの良さを際立たせているだけだ。
一緒にいるとこれだから嫌なんだ。
それでイケメン振りを隠しているつもりか! といっそ怒鳴れたらどんなにスッキリするか。
「本当だな。今日の格好は目立ち過ぎるぞ、お前。さっきからズット見られていたのに、自覚症状なしか、鈍感だな」
何を言う! 無自覚は社長の方だ!
ハハハと笑う惚けた社長の後頭部を、思わずブッ叩きそうになった。