痛快! 病ンデレラの逆襲
「それにしてもウイークデーなのに、たくさんの人ですね」
行き交う人々の顔は、皆、明るくとても幸せそうだ。
「本当だな。俺も意外だった。だが、日本人ばかりじゃなさそうだぞ」
そう言われてみれば、外国語が飛び交っている。
「海外からのお客様がたくさんいらしている、ということですね」
「ああ、ここ最近、ケータリング事業が右肩上がりなのは、そのお陰もある」
怪訝な顔をすると、社長が呆れ顔で言う。
「だから、海外からのお客が多いから、富裕層宅ではパーティーが増え、ケータリングする機会が増えたと言っているんだ」
ああ、なるほど、と手を打つ。
「社長! 儲かっていますね」
若干、嫌味を込めて言う。
「ああ、だからボランティアへの資金も増え、あちこち赴ける」
嫌味は全く通じず、逆に、とってもいい話を返してきた。
そう言えば、ボランティアの資金は全て会社が賄っているんだった。
ちょっと自分が恥ずかしくなった。
「社長! もしかしたら、社長はとっても奇特な方だった……のですか?」
「どうしてそこで疑問符を付ける。言い切れ!」
私の首に腕を回し、社長が羽交い締めする。
「苦しいです、社長」
僅かに力を緩めると、社長はそのまま私の肩を抱き歩き始める。
「社長、凄く近いのですが」
「こうしていた方が温かいだろ」
「でも……」
いつになく近い距離から、普段はしない神秘的でウッディな香りがフワリと鼻を掠める。
「社長、何かつけていらっしゃいますか? いい香りがします」
「ああ、シャネルのエゴイストだ。仕事中は絶対に付けないがな」
その言葉と香りで、改めて今がプライベートだと気付かされ、気持ちがソワソワし始める。
「しゃ社長! あれに乗りましょう」
変てこな気持ちを追い出すように、見もせず、勢いよく指差す方向には……まさかの絶叫系ジェットコースター。
OH NO! と心の中で絶叫する。
「お前、本当に乗れるのか?」
心配そうに念を押される。
ゴクリと唾を飲み込み、女は度胸! 「大丈夫です!」と返事をする。