痛快! 病ンデレラの逆襲
「おい! 生きているか?」
ベンチにだらりと座り込む私に、社長はペットボトルを渡す。
冷たい水をコクコク飲み、ハーッと息を吐き出し、フルフルと首を横に振る。
「社長、私、舐めてかかっていました。皆さん、よく喜んで乗りますね。あれは凶器なメカです」
逆さになって通り過ぎるジェットコースターから、歓喜(?)の声が聞こえる。
「皆、ストレスを発散しているのだろ。大声で叫ぶとスカッとするからな」
「確かにそうですが、それなら、山に登って『ヤッホー』と叫び、木霊と戯れた方がどんなに健全か」
そうだ、なにもお金を出してまで恐怖体験しなくても……と見つめる先には、トルネードの如く回転するジェットコースターの姿。
思わず、くわばらくわばら、とお千代さんの癖を真似て手を擦り合わせていると、「こら、縁起でもないことをするな!」と社長に叱られる。
「社長、見ているだけで雄叫びを上げそうです」
「じゃあ、他へ行くか?」
コクンと頷くと、社長は私の腕を掴み、立ち上がらせる。
「まだ、顔色が悪いな」
頬を撫で、手を繋ぐ。
正常な意識がお留守状態の私は、社長のなすがままだ。
握られた手を見つめながら、温かいな、とその手に引きずられ、後に続く。