痛快! 病ンデレラの逆襲
向かった先は観覧車だった。
「これなら大丈夫だろ」
懐かしい。
赤いゴンドラがゆっくり近付く。
係員の誘導で中に入ると、外からしっかりドアを閉められる。
「社長、ドキドキしませんか」
地上を離れ、しだいに広がる視野に興奮が隠せない。
「こんな風に夜景を見るのは初めてです」
遊園地の明かりが光の束となり、やがて遠くに見える街の明かりと一つになる。
「宝石箱の中にいるみたいです」
レッド、ブルー、イエロー、オレンジ、パープル……カラフルに色が混ざり合う。天上から見下ろす地上の煌めきはうっとりするほど美しい。
「前はお昼間だったから、こんな風に見たのは初めてです」
「その日のこと覚えているのか?」
首を横に振る。
「お千代さんと遊園地で、メリーゴーランドと観覧車に乗ったことぐらいしか」
「そうか」と社長はそれっきり黙ってしまった。しかし、それが気にならないほど、私は夜景に目を奪われていた。