痛快! 病ンデレラの逆襲

「でも、最近のファーストフードも進歩しましたね。以前のように早い・安いだけじゃ売れなくなっているってことでしょうか」

社長の習慣に付き合い、園内のフードコートやレストランを舐めるように見学した。

「それだけ、豊かな時代で育ってきたんじゃないの」
「誰がですか?」

チョロスの最後の一欠けを口に放り込むとモゴモゴ動かしゴクンと飲み込む。

「ファーストフード族の一部が。だから、欲を満たす対象者のために店側は四苦八苦奔走する」

まるでイタチごっこだな、とイタチを想像するが、イタチってどんなだったろう、と何故かアライグマを思い浮かべ、ああそうだ、それは会社の手洗いマークだったと思い出す。

「おい、聞いているのか」と念を押され、「はい」と生返事をすると、社長は、聞いていなかったな、と舌打ちしつつ話を続ける。

「で、早いが安くない、という今時の図が追加された」

人間の三大欲。『食欲』『睡眠欲』『性欲』……欲は限りなく果てしない。
社長の話を聞きながら、私は今……睡眠欲だな、と大きな欠伸をする。

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