痛快! 病ンデレラの逆襲
車は高速を降り街に入る。
「社長、夜なのに、車がいっぱい走っていますね」
「普通だろ」
そうか、これは普通なのか、と夜の街を眺める。
深夜というのに、人も大勢歩いている。会社と家との往復で知らなかった。
皆、何をしているのだろう。
明日お休みの私はいいが、仕事の人も大勢いるだろう。
夜遊びとは体力を伴うな、とまた欠伸をする。
「今度はこの街の中に連れて行ってやろう」
大きく開いた口をパクンと閉じる。
それはまたドキドキするシチュエーションだ。
もしかしたら、大人の遊びというヤツだろうか。
「社長、バーとかパブとかクラブとか言われるところですか!」
「何だ、そういうところに行きたいのか?」
両手を胸の辺りで組み、ワクワクと社長を見つめ、コクコク頷く。
「お千代さんが、そういう場所は不良の行くところだと、許してくれないので」
「そう言えば、お前は歓送迎会は勿論、忘年会も新年会も欠席だったな」
「あっ、でも、昼間開催される、各部対抗運動会にはちゃんと出席しています」
社内行事を、オール拒否している、と思われるのは心外だ。
「ああ、毎年、障害物競走では、ガッツで一等取っているな」
「社長、ご存知でしたか。毎度、豪華な景品ありがとうございます」
そう言えば、今年の賞品は豪華国産三大牛セットだった。蕩けそうなお肉にお千代さんも喜んでいた。
美味しかったな、あのお肉。
「お前、ヨダレが垂れているぞ」
「あっ、すみません。あのお肉がとても美味しかったものですから」
バッグからハンカチを取り出し、口周りを拭きながら、「来年もよろしくお願いします」と言うと、社長が大笑いする。
「お前、もう、優勝する気でいるんだな。それより、次回の夜遊びで、肉の美味しいところに連れて行ってやる。それも学びだ、楽しみにしておけ」
おお、それは本当に楽しみだ。私はもう一度ハンカチで口元を押える。