痛快! 病ンデレラの逆襲
「って、どうして私の話になるの?」
梨子が思い出したように、私を見る。
「私の話ですか? 楽しかったですよ。モグタンに会ってきました」
「モグタンって、あのスイーツランドの?」
要子が聞く。
「はい。夜の遊園地は……衝撃的でドラマチックでした」
「そうよ、それよ。その衝撃的でドラマチックの内容を知りたかったの」
ワクワクと梨子が再びペンを持つ。
「そうですね。まず、イルミネーションが幻想的で……」
「ウンウン、それは素敵でしょうね」
「ロマンティックだわ」
二人はウットリした顔で天井を見る。
「それから、絶叫が強烈で、そうそう、モグタンが私に抱き付いてチュッとキスをしたら、社長がパカンとモグタン頭を殴って、モグタンが『痛い』って声を出したんです。あれは衝撃的でした。着ぐるみが話すの、初めて聞きました」
「って、男と女が夜の遊園地に行ってて、それのどこが衝撃的でドラマチックなの!」
「そうそう、もっとこう、あるでしょう! ラブロマンスっぽいことが!」
梨子と要子が、テーブルをバンと叩く。
「そんなこと言われても……あっ、そう言えば、絶叫マシンに酔ってしまって、社長が手を繋いでくれました」
「そうよ、そういうのよ!」
「まるで、お父さんみたいでした」
私の言葉に二人はガクリと項垂れ、ダメだこりゃ、と栗蒸し羊羹を無言で食べ始める。