痛快! 病ンデレラの逆襲

「あれから一週間。お千代さん、まだ帰ってこないのかな」

二人用のダイニングテーブルを挟み、向かい側のお千代さんの席に座るモグタンに話し掛ける。

テーブルの上には本日の夕飯。肉じゃがとサンマの塩焼き、ほうれん草と人参のお浸し、そして、白菜と厚揚げの味噌汁とおにぎり。

「肉じゃが作り過ぎたね。コロッケにしちゃおうか」

モグタンはお茶目な顔で笑っている。

「お食事中のテレビは禁止です」とお千代さんに言われているが、シーンと静まり返った部屋の中は寂し過ぎる。

ポチッとリモコンのスイッチをオンにする。

「では、次のニュースです……」

この人よくテレビで見掛けるな、とイケメンアナウンサーと名高い鳳居京之助を見ながら、よく噛まずにあんなスラスラニュースが読めるものだ、と感心する。

「隣の客はよく柿食う客だ」とゆっくり言っても、『柿』のところで、か、か、か、と詰まってしまう。

あらっ、何だか面白いかも、と食事そっちのけで早口言葉を思い出し次々言ってみる。

『赤巻紙、青巻紙、気巻紙』のところを「赤巻き巻き、青巻き巻き、黄巻き巻き」と言い間違えたり、『東京特許許可局許可局長』を「東京特許ときゃきゃく……」と言ってみたり、独り大笑いする。

「モグタン、面白いから明日社長にもやってもらおうね」

かなり気分が上昇したので、おにぎりにかぶり付く。

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