痛快! 病ンデレラの逆襲
「お前、総合食品商社『鳳凰』を知っているか?」
知っているも何も、我が社もお世話になっている食品専門の輸入業社だ。
自らも輸入食材専門店『ピュア』を立ち上げ、チェーン展開させ、珍品から超高級輸入食材を扱う店として広く世に名を知らしめている。
「で、その鳳凰がどうかしましたか?」
社長はチッと舌打ちし、顔をしかめる。
「仕事のことなら、お前なんかの手は借りない」
あれっ、今、物凄い失礼なこと言われたような気がする。
「仕事じゃないから、面倒なのだ。まさかこんなつまらぬことでアレを渡さなければいけないとは……」
ブツブツ文句を言う社長に、いろいろ突っ込みたいところだが、ここは黙って話を聞くことにする。
「鳳凰の総帥に俺はいたく気に入られ、可愛がられている」
自慢か?
「鳳凰は成り上がりで親族内継承だが、三代続いているのは大したものだ。で、俺のことを気に入った総帥の鳳凰宗利が、つい先日だが、俺を曾孫の婿にしたいと言い出した」
おやおや、しがらみっていうやつで断り辛いというわけですね。
「で、先手必勝だ。見合いの席を設けられる前に、お前を婚約者として紹介し、話を事前に食い止め、丸く収めたい」
なるほど、だから私か。
イヤ、何故私なのだ、と思いながらも、同情して欲しそう顔をしているので優しい言葉を掛ける。
「社長もいろいろ大変ですね」
「全くだ! 政略結婚なんてナンセンスだ」
「政略結婚か……」
突然フラッシュバックするように古い記憶が蘇る。
私の婚約者って人はどうなったのだろう?
一度も会ったことはなかったが……。